3.キャシーのシンギングとレパートリー

写真提供:プランクトン



Q)キャシーさんのシンギングはとても個性的でちょっと似た感じの歌手を思いつかないのですが、それでもあなたのシンギングに影響を与えたような歌手はいるのでしょうか?

C)私の出身のロスコモンはトラディショナル・フォーク・ミュージックと共にアメリカのカントリー・ミュージックが盛んなところなのよ。ここのトラディショナル・ミュージシャン達が、何故こんなにブルーグラス・ミュージックに親しんでいるのか信じられないくらいだと言われるわ。私の家でもケイリー・バンド(トラディショナルのダンス・ミュージックを演奏するバンド)のレコードと共にハンク・ウィリアムスやジョージ・ジョーンズのレコードが並んでいたのよ。    
 私の受けた最初の影響は多分、父親や兄姉達からだと思う。それから全てのレコードからね。ティーン・エイジャーの頃はあらゆる種類の音楽を歌っていたわ。フォークやトラディショナル・ミュージックに限らずね。ダーヴィッシュに参加した後に私は歌の装飾などの自分のトラディショナル・シンギングを発展させたのです。20代に入ってからね。
                                                      
Q)なるほど。

C)また私はコネマラのジョー・ヒーニーや、ニクラース・トビーンの大ファンでしたし、後にはドロレス・ケーンやトリーナ・ニ・ゴーナルも聞く様に様になりました。歌を始めると他人の歌のクオリティが分かる様になるもので、特にシャン・ノースの歌手達はファンタスティックだと思う様になったわ。彼らは二度と同じ様には歌わないのです。
〔注:ジョー・ヒーニー(1919-1984) はアイルランド西岸のコネマラ地方が生んだ偉大なトラディショナル・シンガーで、ゲーリックと英語の両方で歌った(なおキャシーは実際には「ジョゼフ・オヘイニー」と呼んでいた)。ニクラース・トビーン(1928-94) はアイルランド南部のウォーターフォード州のゲール語地域出身の名歌手。ヒーニーやトビーンは優れたシャン・ノース(オールドスタイルの歌唱)の歌手である。〕                                                     

Q)歌の選曲の幅が広いというのもダーヴィッシュの特徴の一つと思います。例えば『ハーモニー・ヒル』 (日本盤トリニティーTRCD0091,1993)に入っている"HILLS OF GREENMORE"は1970年代の始めにアル・オドンネルとかスティーライ・スパンのレコードで有名になった歌だと思いますし、一方『ミッドサマーズ・ナイト』 (TRCD0095,1999)にはロスコモンのローカルな歌("There was a Maid in her Father's Garden") も入っているという様に非常に凝った選曲ですね。どういうポリシーで歌を選んでいるのでしょうか?
            
C)私はスティーライ・スパンやアル・オドンネルのバージョンは聞いた事が無いのよ。その歌はマイケルが多分テープを持っていたのでしょう。...ある歌を録音した後に人から「あのアルバムに入っていた歌だね」と言われるとガッカリしてしまうので、余り他人が歌っていない歌を歌う様にしているの。しかし不思議なもので、歌というのは火山が突然爆発するみたいに、3つのグループが同時に録音してしまったりするものなのよ。それで誰かが諦めなければならなくなったりもするけれど、でも色々なバージョンを聞くというのも面白い事ではあるわね。
"There was a Maid in her Father's Garden" については、知る人ぞ知るといった存在の歌の収集家(Frank Browne)から亡くなるすぐ前に聞いたものです。...またダブリンにあるアーカイブもよく利用しているわ。そこのニコラス・カーラインという人が良い歌を教えてくれるの。                                                                        
                                                    
Q)基本的には他人の録音していない歌を録音している訳ですね。

C)そうです。それに古い歌に新しい息吹を与えるという作業も私達は好きなのです。宝石の原石みたいな何百年も前の歌を輝かせたいの。また古い歌を見つけるだけではなくて、それを使って自分達なりに作曲する事もあります。言葉を幾つかとかベーシックなメロディーを古い歌から取ってきてそこに自分たちのイントロやブリッジなどを付けて新しいものにして、歌詞の内容的にも音楽的にも自分たち独自のものにするといった具合にね。

Q)それは良く分かります。例えば、『ミッドサマーズ・ナイト』に入っている"Red-haired Mary" ですが、ビデオの『ミッドサマーズ・ナイト・セッション』(TRVH0090)の方にはオリジナルのシンガーの歌が収録されていてCDのダーヴィッシュ版と聞き比べが出来ますね。CDの演奏は非常にエネルギーに溢れていて、ダーヴィッシュらしい素晴らしいアレンジだと思います。

C)それは典型的な例で、ビデオの方は原石のオリジナルのバージョンで、アルバムの方はダーヴィッシュのバージョンです。少し変えているけれどコーラスの部分は一緒なの。

                           

                                                             

                                                                 

                   

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