5.マディの最新の音楽活動について
Q)最後に、マディさんご自身の最近の活動についても少し伺いたいと思います。まずマディさんが再び参加したスティーライ・スパンの最新盤の『ザ・ベリー・ベスト・オブ・スティーライ・スパン〜プレゼント』
(トリニティーTRCD0064,'02) についてですが、往年のスティーライの馴染みのレパートリーを新しい録音で再び聴けるというのはファンとしては大きな喜びですが、アーティストとしてはどのような気持ちで再録音されたのでしょうか?
M(マディ))凄く面白い経験だったわ。全くオリジナル通りに歌ったものもあれば「WHEN I WAS ON HORSEBACK
」のようにかなり変えたものもあるけれど、自分としては変えたものの方が好きですね。曲がもう一度生き返ったという感じがしますから。スティーライのメンバーは一旦解散してから皆それぞれずいぶん違う方向に行っていましたから、もう一度足場を元に戻すという意味もあったと思います。これは私達だけでなく聴衆にとってもきっとそうだったのではないかと思うのです。自分たちはもともとどこから来たのか再認識するという意味でね。だから、ある意味で良いエクサザイズになったのかもしれないわ(笑)。
Q)それで、今後のスティーライとの録音についての計画は?
M)ええ、あります。まだ曲は何にも出来ていないけれど(笑)。スティーライは来年で結成35周年になるのでそれに合わせたニュー・アルバムとツアーを計画しているわ。
Q)そのアルバムは、カーニヴァル・バンド次のアルバムみたいに特定のコンセプト・アルバムになるのでしょうか?
M)ううん、多分そうはならないと思います。でも今の時点では何も分からないわ(笑)。
Q)それでは、マディさんの最新のソロ・アルバムの『ライオンハート』
(トリニティーTRCD0066,'03) についてですが、前作の『アーサー王伝説』(同TRCD0058,'01) の様にやはり非常にシアトリカルな印象がありますが、その一方でナチュラルな感じで歌われている「YERROW
HANDKERCHIEF 」(この歌は"FLASH COMPANY" の名前で広く知られている)のような有名なトラディショナル・ソングも非常に印象的でした。
マディさん自身から見ると『アーサー王伝説』とこの『ライオンハート』との相違点は特に何かあるのでしょうか?
M)『YEAR』 (英PARK PRKCD20,'93) から始まって『レイヴンチャイルド』 (トリニティーTRCD0038,'99)
、『アーサー王伝説』、『ライオンハート』は一種の発展形なのです。残念ながら、どんどん良くなっていったかどうかは分からないけれど(笑)だんだんと大きなものになっていったという意味でね。『YEAR』に入っていた「The
Fabled Hare 」なんかは今後また再録音するつもりです。
スティーライの「The Weaver And The Factory Maid 」は3つの曲が一つになっているのですが、それが今やっているような事を最初に試みた例だと思います。だから言ってみれば随分長い時間をかけてようやくここに来たという訳ですね(笑)。
Q)そのアイデアというのはひとつのテーマに従って曲を並べるという...
M)そうです。組曲にしたのもあるし、しなかったのもあるけれど。
注)「The Fabled Hare 」は野うさぎをテーマにした組曲で殆どマディの自作曲で構成されている。「The Weaver And The Factory Maid 」(女工に恋をした機織り職人のバラッド)は一つの曲の形になっているが、これはもともとA.L.ロイドの歌っていたトラッド・ソングに、童謡と、ロバート・シナモンドの歌っていたトラッド・ソングを組み合わせたものだという。この歌は上記のスティーライの最新盤にも再収録されているが、もともとは1973年のスティーライのアルバム『PARCEL OF ROGUES』(英CHRYSALIS CHR1046)に収録されていた。
Q)ありがとうございました。皆さんがまた色々な組み合わせで将来何度も来て頂く事を期待しています。つまりマディさんはスティーライととか、ジャイルスさんはデュファイ・コレクティヴとか。もちろんマディ&ザ・カーニヴァル・バンドとしても..
M(マディ)/G(ジャイルス))ハハハ、ありがとう。
〔後記〕

冒頭に書いた通り、今回のザ・カーニヴァル・バンドは極めて多忙なスケュールの中での来日だった為に、全員に会えたのはコンサート終演後の打ち上げの席だけだったが、短い時間の中でも彼ら全員が非常に気さくでジェントルで良い意味でのインテリばかりである事がよく分かった。アンディ・ワッツ以外は初の来日だったが、全員見事な箸の使い方で日本食を楽しんでいて、ビル・バドリーなどは即興で俳句まで詠んだりしていたのだった。インタビューに答えてくれたジャイルスは多才なメンバーの中でも一際多岐に渡る音楽活動を行ってきた重要なアーティストだが、その活躍ぶりからすれば意外なくらい本当に穏やかでシャイな人柄であった。
アンディは過去に様々な古楽系のグループの一員として数回の来日経験があり、本年11月にもエイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団の一員としてヴィクトリア・ムローヴァ(バイオリン)などと共に再び来日するという。またビルの奥さんは日本にもファンの多いハープシコード奏者のソフィー・イエーツであり、英国では時折ソフィーとのデュオでのコンサートも行っているとか。また彼は日本を代表的するリュート奏者の、つのだたかし氏ともとても親しいようだ。将来はザ・カーニヴァル・ンドとソフィー・イエーツの共演コンサート(!)
などというアイデアも全くの夢ではないらしい。多彩な演奏と真に自由な創造精神を併せ持った彼らには是非これからも様々な形で何度も来日して欲しいものである。
(2003.8.15 白石和良)