3.ザ・カーニヴァル・バンド単独の音楽とマディとの出会い
Q)それでは、次の話題に移って、マディさんと出会う以前、あるいはそれ以降でもカーニヴァル・バンドだけで演奏する場合の音楽は、具体的には『ホイ・ポロイ』
(トリニティーTRCD0164) で聴けるような音楽と思って良いのでしょうか?
G(ジャイルス)/S(スティーヴ))その通り。いろいろな要素をミックスしていて、自分たちに合うと思ったものはどんどん取り入れている。
Q)カーニヴァル・バンドだけで作ったアルバムは、『ホイ・ポロイ』の他には『LIVE-JUMP FOR JOY 』と『MADAME LUCETTE』の2作でしょうか?
G/S)『MADAME LUCETTE』は最初に作ったカセットなので、(本格的なアルバムとみなしているのは)『LIVE-JUMP
FOR JOY 』の1作だけですね。
注)『LIVE-JUMP FOR JOY 』は、1994年のバーミンガムでのライヴを収めた自主制作的なCDで、現在はカーニヴァル・バンドのオフィシャル・サイトで通信販売している。『MADAME LUCETTE』の方は、『プロテスタント会衆讃美歌』の原盤解説に記述しあるもので、それによると1989年作のバンドだけの(マディ抜きの)最初の録音であるという。なおこのMADAME LUCETTEというのは、下記の通り彼らのレパートリー曲の一つで、『LIVE-JUMP FOR JOY 』にも収録されている。
Q)昨日のコンサートでもカニーヴァル・バンドの皆さんは素晴らしいシンガーだという事が良く分かったのですが、マディさんのいない時にはどのような種類の歌を歌うのですか?
M(マディ)アハハ、カーニヴァル・バンドが素晴らしいシンガーというのはその通りですね。
S/G)僕たちは自分たちをシンガーとは思っていないのだけれど、皆で歌う輪唱のような歌とかね....。『LIVE-JUMP FOR JOY 』には幾つかの歌が入っているよ。例えば、全員で歌う「Je Suis d'Allemange 」とか、「Sale,nina de la iglesia.. 」とかね。それから「Okolo Mesice」はアンディがソロを取って歌うんだ。アンディは「Madame Lucette」でも歌っているよ。これは16世紀にフランスの劇場で歌われていた歌なんだ。
Q)84年のBBCのクリスマスのラジオ放送の為に始めてカーニヴァル・バンドとマディさんが共演された訳ですが、マディさんもカーニヴァル・バンドも特にクリスマスの歌のレパートリーで親しまれていた訳ではなかったのに良くこういう企画が持ち上がったものだと思うのですが...
M)確かに、どういうきっかけであの企画が実現したのか、考えてみると不思議だわ。私は5曲ぐらい入ったカーニヴァル・バンドの演奏のテープをBBC
のプロデューサーから渡されてこれで歌ってくれないか、って依頼されたのだけれど。つまり自分のところに話が来た時はカーニヴァル・バンドの演奏のテープは出来ていた訳で、そこに至る詳しいいきさつは知らないわ。そのカーニヴァル・バンドの演奏では、特に「御空を馳せ行く御使いたちよ(Angels
from the Realms of Glory) 」が印象的でした。何故なら、この曲のこんなに早い演奏のバージョンを聴いた事がなかったから、この演奏で歌ったら面白いかも、と思ったのよ。
注)この曲は98年の『クリスマスのキャロル』 (トリニティーTRCD0163) に収録されている。
Q)マディさんのスティーライ・スパン時代のレパートリーは良く知っています。宗教曲は少ないですが、例外的に中世のラテン語の聖歌の「Gaudete 」を大ヒットさせましたね。という事は、録音はしていなかったけれど昔からキャロルに関心があったいう事なのでしょうか?
注)「Gaudete 」はスティーライの72年のLP『BELOW THE SALT』 (英CHRYSALIS CHR1008)の収録曲。
M)その通り。私は昔からキャロルが好きだったわ...英国人ならば皆そうだけれど(笑)。キャロルも伝統の一部ですしね...私の子供の頃はクリスマスにキャロルを歌うのが伝統でした。今ではクリスマスはもっと商業的になり、アメリカナイズされてしまっているけれど。ホワイト・クリスマスとか、あるいはスレイドがやっているような曲みたいにね(笑)。
Q)なるほど、つまり「ジングル・ベル」ですね(笑)。
M)面白い事に、多くの人達からクリスマスの休暇の最初の日に私達のCD、特に『A TAPESTRY OF CAROLS』を掛けるんだと言われるのよ。ある意味で正統的なクリスマス・キャロルという事なのでしょうね...
Q)確かにイングランドにはクリスマス・キャロルの強い伝統があり、また一方で宗教歌以外のトラディショナル・ソングの強い伝統もありますね。しかし、マディさん以外にトラディショナル・フォーク・ソングと民衆のキャロルの両方を多くレパートリーに取り入れているシンガーを余り知らないのですが、やはり宗教歌とそれ以外の歌では同じように伝統の歌でも扱われ方に違いがあるという事なのでしょうか?
M)まあ、キャロルは一般の人々の興味からはどんどんマイナーなものになってきていますからね。それは(キャロルを歌う)伝統自体が今の時代には興味を引かないものになってきているし、また伝統自体も変わっていますし、それから巨大なテクノロジーの進歩やアメリカ音楽の影響もあるわ。(現代の一般の)英国人にとってアメリカ音楽の方が耳慣れたものになっていて、英国音楽を聞くととても異国的に感じるくらいになっているのです。
Q)なるほど分かりました。ところでマディさんはトラディシナル・フォーク・ソングを歌う時とキャロルを歌う時で、意識的に歌い方を変えたりはするのでしょうか?
M)やはり両者は違うように歌われるべきものだと思います。教会の中で歌われていた英国の宗教歌は最後に言葉を長く伸ばして息継ぎをするのですが、私達はそれをしないので短い時間で息継ぎをしなければならず、歌うのは大変なのです。言葉も多いですし。それから声も高めですね。やはりこれはクラシックの伝統に近いものがあるわ。それに比べると、フォーク・ソングはもっと歌うのが楽だわね(笑)。
注)「最後に言葉を長く伸ばして息継ぎをする」というのは、前出の質問に対する答えの中の「歌の一節の最後にポーズを入れたりする」と同じ事を指しているようだ。